京都中央信用金庫は、認知機能や判断能力が低下した場合の代理人の指定を顧客から受け付けるサービスを、今年9月1日から始めるそうです(京都新聞2022/8/13朝刊)。
サービスの利用は無料で、認知症などになる前に顧客が子どもや配偶者など推定相続人と来店して手続を行っておく必要があるそうです。
そして、将来顧客の認知機能が低下した時などに医師の診断書を提出すれば、登録しておいた推定相続人が代理人として預金を管理できるようになるのだそう。
成年後見制度の使い勝手の悪さのために始まったサービスなのでしょう。
しかし、この記事を見て真っ先に思ったのは、推定相続人どうしの仲が悪い場合に、一方の推定相続人が預金管理者になって預金を使い込むケースが増えるんだろうな、ということです。
まあ、そういうまずいケースでは、他方の推定相続人が成年後見申立てをすれば成年後見が優先され、成年後見人が預金管理を行うようにできるのですが。
また、元気な時にこのサービスを使おうとするくらい備え万端な方であれば、他のうまい方法を選択するのでは?という感もあります。
成年後見の使い勝手の悪さから苦渋の策で生まれたサービスなのだと思います。
しかし、様々な相続トラブルや成年後見の事例に日々接している立場からすると、本当に本人の利益になるのか?将来の紛争の元にならないか?という疑問は正直感じます。
こういったことを考えていると、家庭裁判所という国の機関が監督を行うという点は、成年後見制度のメリットなのだなと意識します。
とはいえ、成年後見の利用が広がっていないことも事実で、それゆえにこういったサービスが苦渋の策で生まれているわけです。
弁護士としても、使い勝手の悪さから成年後見制度の利用を勧めないことも、結構あります。
また、横領などは論外だとしても、いかがなものかと思える姿勢の専門職成年後見人の話に接することもあります。
成年後見制度の見直しの議論が進んでいるようですが、制度に関わる立場としてとても気になるところです。