
私の愛読書『家庭の法と裁判』2021年2月号が届きました。
表紙の絵が何者か一瞬認識できませんでしたが恵方巻ですか。
というか毎号こんなところに挿絵なんかあったっけ。。
調べればすぐに分かりますが、謎は謎のままにしておくのもアリなので放っておくことに今決めました。
今回はこの判例を一つまみ。
妻である申立人が、別居中の夫である相手方に婚姻費用の分担を求めた事例において、いわゆる標準算定方式によって算定される婚姻費用の額に加えて、申立人が別居に伴い新たに賃借した住居費の一部の分担が命じられた事例
東京家審平成31年1月11日
別居中の夫婦間における生活費(婚姻費用)については、養育費と同じく家庭裁判所の算定表が公開されています。
これに双方の収入を当てはめればだいたいの相場額が分かります。
それなりに複雑な計算式を使えば、より具体的な婚姻費用額も算定可能です(標準算定方式)。
弁護士が関わる事案でも、たいていは算定表によって婚姻費用額を定めるところです。
しかし、この裁判例では、算定された婚姻費用額に加えて、妻側が別居に伴い新たに負担することになった賃料の一部についても夫に負担するよう命じられました。
事案を見ると、不貞行為が発覚した夫が家を出た上に、これまで住んでいた社宅から退去するよう妻に求めたため、妻はやむなく近隣住居を新たに賃借したという事情があったようです。
このような経緯も踏まえ、裁判所は「費用の公平な分担」を理由に妻の賃料の一部(婚姻費用に元から含まれている住居費を除いた金額)を夫に負担させるべきと判断しました。
有責配偶者が常に、婚姻費用とは別に相手方の賃料を負担しなければならないと判断されたわけではありません。
婚姻費用には住居費も含まれているため、基本的には婚姻費用の中で住居費もやりくりする必要があります。
ただ、専ら一方当事者の行為のみによって余計な住居費等が発生したケースでは、婚姻費用の相場額にとどまらず、それらの住居費等も追加で負担するよう求める余地がありそうです。
「相場」にとらわれすぎないよう意識するのが大切ということですね。