1.法定養育費とは
令和8年5月までに、法定養育費の制度が施行されます。
これまでは離婚時・離婚後に養育費の取り決めをしなければ、監護親(子どもを育てている親)から他方の親に対して子どもの養育費を請求することはできませんでした。
しかし、今後は養育費の取り決めをしなくても、定額の養育費を必ず請求できるようになります。
2.法定養育費の金額
そして、その金額は子ども1人当たり月2万円とされる方向で検討されているようです(法務省の省令案)。
この月2万円という金額に対しては、少なすぎるという世間の反応も目につきます。
しかし、法定養育費は、養育費の取り決めがされていない時のためのあくまで暫定的なものです。
1人当たり月2万円よりも増額すべきケースでは、これまでどおり協議や調停によって養育費を取り決めればよいのです。
話合いでは合意できなくても、調停を利用すれば最終的には審判によって必ず適正な養育費が定められます。
法定養育費はあくまでも養育費を取り決めていない場合の救済策にすぎず、どんな場合も養育費が月2万円に固定されたわけでは全くありませんので、誤解しないよう注意が必要です。
3.法定養育費の終了時期
法定養育費は、父母の話合いや家庭裁判所の審判によって養育費が取り決められた時や、子どもが18歳に達した時まで発生します。
ここで注意が必要なのが、子どもの18歳が法定養育費の終了時期とされていることです。
実務上、養育費の支払終期は子どもが20歳に達した時と定めることが多いのですが、法定養育費の支払終期は18歳です。
つまり、18歳を超えて養育費を支払ってほしい時には、やはり協議や調停、審判によって取り決めを行う必要があります。
4.法定養育費を請求できる期間と遡及
法定養育費は、離婚の日に遡って発生します。
つまり、例えば離婚から2年後に請求したときは、2年分の法定養育費をまとめて請求することが可能です。
5.養育費への一般先取特権の付与
法定養育費の導入と並んでインパクトが大きいのが、養育費への一般先取特権の付与です。
これによって、従来は調停や公正証書で養育費を取り決めなければ差押えを行えなかったのが、そういった債務名義がなくてもいきなり差押えを行えるようになりました。
養育費を請求する側からすると非常に強い権利であり、法定養育費の導入とあいまって、養育費がかなり確保しやすくなる見込みです。
それに対し、請求される側からすると、たとえ養育費を取り決めていなくてもいきなり高額の差押えを受ける可能性があることになります(例えば子ども3人の5年分の法定養育費なら計360万円)。
①支払能力を欠くために法定養育費を支払えないときや②法定養育費の支払によって生活が著しく窮迫するときには、家庭裁判所は全部又は一部の免除や支払の猶予を命ずることができるとされているものの、どういったケースで対象となるのかは未知数です。
今後は養育費の不払いが大きなリスクになることは間違いなく、たとえ養育費を取り決めていなくても法定養育費は必ず支払わなければならないものだという周知徹底が必要になるでしょう。

