京都弁護士のおいでやす日記
Blog

【離婚と家庭のお話】

相場では足りない

2021年2月15日  【離婚と家庭のお話】 

私の愛読書『家庭の法と裁判』2021年2月号が届きました。

表紙の絵が何者か一瞬認識できませんでしたが恵方巻ですか。

というか毎号こんなところに挿絵なんかあったっけ。。

調べればすぐに分かりますが、謎は謎のままにしておくのもアリなので放っておくことに今決めました。


今回はこの判例を一つまみ。

妻である申立人が、別居中の夫である相手方に婚姻費用の分担を求めた事例において、いわゆる標準算定方式によって算定される婚姻費用の額に加えて、申立人が別居に伴い新たに賃借した住居費の一部の分担が命じられた事例

東京家審平成31年1月11日

別居中の夫婦間における生活費(婚姻費用)については、養育費と同じく家庭裁判所の算定表が公開されています。

これに双方の収入を当てはめればだいたいの相場額が分かります。

それなりに複雑な計算式を使えば、より具体的な婚姻費用額も算定可能です(標準算定方式)。

弁護士が関わる事案でも、たいていは算定表によって婚姻費用額を定めるところです。


しかし、この裁判例では、算定された婚姻費用額に加えて、妻側が別居に伴い新たに負担することになった賃料の一部についても夫に負担するよう命じられました。

事案を見ると、不貞行為が発覚した夫が家を出た上に、これまで住んでいた社宅から退去するよう妻に求めたため、妻はやむなく近隣住居を新たに賃借したという事情があったようです。

このような経緯も踏まえ、裁判所は「費用の公平な分担」を理由に妻の賃料の一部(婚姻費用に元から含まれている住居費を除いた金額)を夫に負担させるべきと判断しました。


有責配偶者が常に、婚姻費用とは別に相手方の賃料を負担しなければならないと判断されたわけではありません。

婚姻費用には住居費も含まれているため、基本的には婚姻費用の中で住居費もやりくりする必要があります。

ただ、専ら一方当事者の行為のみによって余計な住居費等が発生したケースでは、婚姻費用の相場額にとどまらず、それらの住居費等も追加で負担するよう求める余地がありそうです。

「相場」にとらわれすぎないよう意識するのが大切ということですね。

落とし穴の話

2021年1月5日  【税務・税金のお話】, 【離婚と家庭のお話】 

『実務家が陥りやすい離婚事件の落とし穴』(東京弁護士会家族法部)を読了しました。

同じシリーズの『実務家が陥りやすい相続・遺言の落とし穴』と比べると、比較的浅めの落とし穴が多かったように思います。

しかし、雪解け後の北海道の道路のように、踏めばタイヤがバーストするくらいの穴も結構ありました。


北海道の道路では、冬の初めに積もった雪が一旦解け、アスファルトに水が浸透します。

その状態で水が凍ると水分が膨張するため、周りのアスファルトが圧縮されます。

そして、そのまま春になって氷が解け水分が蒸発すると、アスファルト内に空洞だけが残り、そこに車の重みなどが加わると簡単に崩壊して道が穴だらけになってしまうのです。

実物を見ないとなかなかイメージしづらいのですが、大モグラが耕したのかというくらい、雪解け後は本当に道が大穴だらけになっています。

(3年前の雪解け期に留萌に赴任した時、ボロボロの道を見て「ここまでこの市の財政は厳しいのか…」と思った、という笑えない話は伏せておきます。)


穴の話になってしまいました。

復習のため、今回の『(略)落とし穴』で意識しておきたい知識を1つ。

離婚時に財産分与によって不動産が譲渡されることがあります。

この際、原則として贈与税は課されないのですが、例外的にその不動産の価値が清算的財産分与としては過大であったときは、過大である部分について贈与税・不動産取得税が課されることがあります。

この点も、分かっていても見落としがちな落とし穴です。


しかし、それだけでなく不動産の価格が取得時よりも増加していたときには、譲渡側に対して譲渡所得税が課されることがあります(財産分与として過大か否かにかかわらず)。

この点に関しては、居住用財産の3000万円の特別控除を利用できることがあるほか、居住用財産の所有期間がその年の1月1日時点で5年を超えていれば長期譲渡所得税の適用を、10年を超えていればさらに税率が低い10年超所有軽減税率の適用を受けられることがあります。

離婚する時に「自宅に住み始めてから何年経ったか」を考えることはなかなかありませんが、譲渡所得税が課税される場面では5年・10年という区切りを意識しなければならないというわけです。

ちなみに、協議離婚を行ったが後に想定外の譲渡所得税が課税されたケースで、財産分与の意思表示について錯誤無効が認められた裁判例(東京高判平成3年3月14日判時1387・6)もあるそうですが、あまり気休めにはなりません。

穴を見落としても大モグラのせいにはできませんので、税務にはつくづく気を付けようと思う次第です。

手続代理人から見た面会交流

2020年10月12日  【離婚と家庭のお話】 

私の愛読誌『家庭の法と裁判』第28号では、「養育費と履行の確保」だけでなく、「手続代理人から見た面会交流」も取り上げられていました。

養育費はお金の問題であり、双方の収入に応じたおおまかな相場額も決まっています。

そのため、養育費についての最大のハードルは「どのように回収するか」でした。そして、このハードルについては法改正によって下がることが見込まれます。

これに対し、養育費と共に離婚後の親子をつなぐ車の両輪と言える面会交流についてのハードルは養育費以上に高く、今後もその状況は続きそうです。

面会交流は双方の親が協力しなければ実現できませんが、離婚した親同士が協力することが容易でないのは言うまでもありません。

お金ではなく、不信感や怒り、恐怖などの負の感情がハードルになっているため、これを乗り越えるのは本当に大変です。

代理人弁護士としても頭を悩ませることが多い面会交流ですが、今回『家庭の法と裁判』で取り上げられていた「手続代理人から見た面会交流調停」(福市航介弁護士)はとても勉強になりました。

代理人として意識すべき視点や働きかけ方、スタンスなどについて実際の実務に則した指摘がされています。

面会交流はマニュアル的な解決ができないこともあり、実務に関して扱った書籍は多くありませんが、今回の論説は面会交流を扱う弁護士の方には一読をお勧めします。

家庭の法と裁判28

2020年10月10日  【離婚と家庭のお話】 

私の愛読誌、『家庭の法と裁判』(日本加除出版)の第28号が届きました。

2か月おきに発行され、離婚、相続、成年後見など家庭の法律問題に関する最新の実務の動向が取り上げられています。

今回のメインテーマは「養育費と履行の確保」でした。

今年4月施行の改正民事執行法によって、調停や公正証書によって取り決められた養育費が支払われないとき、裁判所を介して相手方の財産(預貯金など)や勤務先に関する情報を調べられるようになりました。

これまでは離婚しても養育費がしっかりと支払われるケースはごく限られていましたし、そもそも初めから養育費を受け取ることは期待せず、取り決めすらしないことも多くありました。

ひとり親家庭の貧困率の高さは社会問題となっていますが、養育費の支払が十分に行われてこなかったことがその一因であることは間違いないでしょう。

しかし、今回の法改正によって養育費の履行確保の道がかなり開けました。

これからは、「離婚して子どもと別居しても、子どものために必ず養育費を支払うもの」という意識が社会で強くなっていくのではないでしょうか。

一方で、養育費と共に、離婚後の親子をつなぐ車の両輪とも言える面会交流についても大切にしなければなりません。この点はまた取り上げます。

自己紹介

  • 弁護士・税理士 河本晃輔
  • 京都弁護士会所属
  • 洛彩総合法律事務所(京都市右京区西院平町7クラエンタービル2階)
  • 京都で生まれ育つ。14年にわたる東京・北海道暮らしを経て京都に復帰。現在京都人のリハビリ中。
  • 趣味:旅行、アジア料理、パクチー、サイクリング、野球観戦、旅館探しなど
2021年9月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930  

過去の投稿

洛彩総合法律事務所について

洛彩総合法律事務所について詳しく知りたい方は、公式ホームページをご覧ください。

洛彩総合法律事務所へのお問い合わせ

  • 当ブログへのコメント、お問い合わせにはご対応していません。法律相談をご希望の方は、公式ホームページの問い合わせフォーム又はお電話(075-874-5242)をご利用ください。
  • 当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。