京都弁護士のおいでやす日記
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2021年05月4日

土地所有権放棄制度

2021年5月4日  【相続のお話】 

『家庭の法と裁判』4月号を(ようやく)読みました。

法制審議会による「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱」も解説されています。

予定されている法改正(2023年頃?)では、所有者不明土地に関する様々なルールが変わることになります。

特に、(1)相続登記申請の義務化や(2)土地所有権放棄制度の新設は、世間をにぎわすこと間違いなしです。


(1)を簡単に言えば、相続人が不動産の相続後3年以内に相続登記申請をしなければ、10万円以下の過料を科されることになるという話です。

相続登記がされない原因は、①登記手続が面倒、②不動産に価値がなく名義を変えるメリットがない、といったところでした。

①の登記手続が面倒な点については、近い将来戸籍謄本を全国どの役所からも取得できるようになれば、多少は解消されるのかもしれません。

もっとも、登記を受け付ける法務局は、司法書士を通さない登記申請に対して不親切です(ひどい対応をされた経験を根に持っています。)。

登記をしろと国民に求めるのであれば、誰でも簡単に登記できるシステムを国が整え、法的根拠のないお作法などにこだわらない姿勢を法務局が持つのが先だと私は思っています。


②の不動産に価値がなく名義を変えるメリットがない場合については、(2)土地所有権放棄制度を活用してくれということなのでしょう。

ただ、土地所有権放棄制度(土地所有権の国庫帰属)の利用条件はなかなか厳しいです。

建物が建っていれば不可。

担保権や用益権が設定されていれば不可。

境界未確定、隣地との紛争があれば不可。

土壌汚染や管理を阻害する工作物・車両・樹木・地下埋設物などがあれば不可。

など色々と条件があります。

つまり、土地をキレイサッパリした状態にしなければなりません。

全て満たし、10年分の土地管理費用を納付すれば、土地の国庫帰属が認められます。


相続財産管理人として不動産の国庫帰属手続を行ったことがありますが、国(財務局)からはとても細かい指摘があり、そう簡単には国庫帰属を受けてくれませんでした。

今回の(2)土地所有権放棄制度も、利用できる土地は限られそうですし、手続も一苦労(土地によっては五苦労くらい)になりそうです。

もっとも、これら法改正の施行はまだ先ですが、特に(2)土地所有権放棄制度についてはご相談者から質問されることが多くあり、世間の関心の高さがうかがえます。

施行されれば制度の利用希望が殺到しそうです。

そして、その大半は条件を満たさなかったり満たすのに時間がかかる土地でしょうから、当面は利用したくてもアポイントメントすら取れないコロナワクチン接種のような状態になると予想しています。

自己紹介

  • 弁護士・税理士 河本晃輔
  • 京都弁護士会所属
  • 洛彩総合法律事務所(京都市右京区西院平町7クラエンタービル2階)
  • 京都で生まれ育つ。14年にわたる東京・北海道暮らしを経て京都に復帰。現在京都人のリハビリ中。
  • 趣味:旅行、アジア料理、パクチー、サイクリング、野球観戦、旅館探しなど
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